空が広い

母が施設に入って一週間、なかなか馴染めなくて、何でここにいるの？と繰り返している。昨日は訪問診療のお医者さまに挨拶と検査（基本的な。それって、前の病院のが使えないの？）のために、母とお出かけ。車で迎えに行ったら、スタッフさんに連れられて玄関ロビーまでトコトコやってきた。気をつけてね、行ってらっしゃい！と言われて、ああ、ここって母の家なんだよね、と思う。

車で10分程度。見慣れない風景を見ながら、今日はどこへ行くの？ねえ、どこへ行くの？何でなの？と繰り返す。なんか、わけわからへんねん。とぶつぶつ言いながら、窓の外を見て、ああ！ここは空が広いなあ！大きな空やなあ！私の住んでた所は都会やから、こんな空は見たことがない、とか言う。良いお天気だから気持ちがいいねえ、と返す。

お母さん、そこにね、新幹線の線路があるんだよ、新幹線通るといいねえ、と言ってたらちょうど白い車体が通って行った。わあ！良かったね、見れたね。
ふうん、あのな、私の部屋からも新幹線見えるねんで。
え？そーなの？確かに線路が近くにあるのは知ってたが見えてるとは！というか、それを覚えてるのもすごい。最近の母はさっきの事が、20年前の事しか覚えてないので、ちょっとびっくり。母の部屋からは近所の街並みと少し向こうに大きな川が流れているのが見えて、その周りには疎らに林がある。ずーっと先には淡路島が見える。

どこに線路が？

病院では血液検査をしたり、レントゲン撮ったり。契約の話を聞いて、書類を書いたり。そして、施設に送って行った。駐車場に車を止めて、少し話す。ここで、落ち着いて生活する練習をしようね。いつか元気になったら家に帰れるかもしれないからね、と言ったら施設の玄関の看板を見て、「介護付き老人ホーム…、そうなん。ここ、老人ホームなんやね」と言った。

さ、お昼ご飯遅れるわ、行こうか。
スタッフさんが、玄関でお帰りなさい！今日はお昼食べたら美容院よ！どんなふうにしてもらう？とかさっさと連れて行った。
あんた、もう、帰るの？と振り返ったが、スタッフさんがはいはいはい、と行ってしまった。

夕方、電話したらさっぱりカットして毛染めをしてもらって、ご機嫌だった。
あんた、お金払っておいてな、頼むわね、と言うものの、どうかなあ？と髪を触っていた。まあ、ご機嫌が良くて良かった。